東海化成では、各部門の個性的なスタッフが力を合わせ、新しい商品を画期的なアイデアを生み出しています。
- 土がついたポリポットの廃棄量を減らしたい。
- 生分解ポット
近年、地球環境問題への意識が高まり、「プラスチックごみを減らしたい」という声も多く聞かれるようになってきました。園芸・農業分野においても、多くの農家さんや園芸家の皆様からご相談の声をいただくようになり、「環境対応型ポット」の開発への長い道のりが始まりました。
従来のポリポットは使用後、産業廃棄物として処理しなければならず、環境への負担が大きいだけでなく、回収作業には手間もお金もかかります。年々人手不足が深刻化する農業現場では、作業の効率化が重要な課題となっており、プラごみ削減と作業の効率化を両立させるための新しいアイディアが求められていました。そこでまず私たちが着手したのが、原料探しと栽培試験です。原料は生分解性のプラスチックを様々な原料メーカーから取り寄せ、作物の成長に悪影響を与えない耐久性と分解性を兼ね備えたものを厳選、農家さんや専門学校にもご協力していただき、試行錯誤を重ねました。様々な気候・土壌の条件下を実施しデータが集まっていく中で、作物の種類ごとにベストな分解速度は異なる、という新しい壁に突き当たりました。
育苗に時間がかかる果樹や宿根草には、分解が遅く安定したポットが必要です。反対に育苗期間が短い野菜類には、早く分解するポットが好ましいということが分かりました。
基本的に生分解性の樹脂は、どの樹脂メーカーも分解スピードが遅いものが多く、野菜類に適した分解スピードの早い生分解ポットをつくることは非常に難航しましたが、開発チームと協力機関の試行錯誤の結果、分解スピードの異なる6種類の生分解ポットが完成しました。現在、生分解ポットのご注文をいただいた際には、まず「何の作物を、いつからいつまで栽培するのか」をヒアリングさせていただき、6種類の中から最適な分解スピードのポットをご提案し、受注生産する形で販売させていただいております。
通常の商品よりも出荷まで手間がかかりますが、お客様ごとの細かい配慮が可能で、大変喜ばれております。
生分解ポットは環境にやさしいだけでなく、植え替えが不要で、ポットのまま土に埋めておけばいずれ水とCO2に完全に分解するので、農業現場の作業効率化にも大きく貢献しています。今後はもっとたくさんのお客様に知っていただくために、全国各地の展示会や様々なイベントに出展し、生分解ポットの名前を広げる活動に取り組んでいます。
- なるべくコストはかけず、ポット詰め作業を効率化させたい
- サイクルスタンド
農林水産省の統計によると、2024年現在、農業従事者の約60%が65歳以上であり、この比率は今後も増加するとのことです。
高齢化に加え、現場の人手不足も深刻な問題であり、お客様からもよく「なるべくコストは抑えて、作業効率が上がる機械を導入したい。」とのお声をいただいておりました。
しかし、農業資材も年々、原材料費の高騰、輸送費の高騰等で値上がりしており、更にプロ向けの性能が良い機械はかなりの値段になります。そのような現状のもと、お客様の声にお応えするため、なるべくコストを抑えた資材の開発が始まりました。
作業の効率化でまず着目したのが、「ポット詰め」作業です。育苗前、トレーにポットをセッティングしますが、この作業を1個ずつ手作業でやると地味ですがかなりの手間になります。ポットサイズによっても異なりますが1枚のトレーに20個~40個のポットを1個ずつセットします。この作業をひたすら繰り返すのです。その後、土詰めの作業となります。これら一連の作業を全て自動で行う機械もありますが、かなり高額となるため、手作業で行う農家さんも少なくありません。
東海化成にはもともと、ポットセッターという人気商品がありました。
片手でも楽々持てるほど軽く、材料も機能も限りなくシンプルに作った為、比較的安価で購入していただくことができます。しかし、全てのポットを確実に一度にキャッチするには、真上からできるだけ垂直に力をかけなければならない、というちょっとしたコツが必要でした。
「シンプル」という点を意識してまず作られたのが、サイクルスタンド(初期Ver)です。ポットセッターが空中に吊り下げられており、使いたいときに引き下ろせばいい為、作業スペースの大幅な確保が可能、トレーのセットからポットを詰め終わるまで簡単に流れるような作業ができるようになり、非常に好評でした。しかし、使用時に振り子のような半円の軌道を描く動きをするため、『なるべく垂直に力を加える』というコツはクリアしにくく、課題が残りました。
そこで改良を重ね出来上がったのが現在のサイクルスタンド(改良Ver)です。
こちらは使用時、上下のみの動きをするように設計しなおされ、ぶらぶらしなくなったので、『なるべく垂直に力を加える』というポットセッターのコツもクリアできました。
材料も機能も限りなくシンプルに作り、コスト削減と作業効率UPというお客様の要望を叶えた商品となっています。こちらも全国の展示会でお披露目し、少しずつお問い合わせも増えてきています。
- プラグトレーを小分けにして、苗の販売企画の幅を充実させ、より良い苗を消費者の元へ届けたい。
- 新規格で販売するにあたり、現場で生まれる課題を解決できるツールも必要。
市場調査で足を運んだホームセンターで葱苗の販売企画として、小分けされたプラグトレーが目にとまりました。葱類は、根の部分を土から出して50本単位などで販売されるのが普通でしたが、このような販売には、店頭での棚持ちの問題、鮮度の問題がありました。この問題をクリアするため、店側の工夫として、ハサミでプラグトレーを切り取り、それを陳列していたのです。
そんな状況を見て、「最初から手軽に切り分けられる商品があってはどうか」と考え、お客様にヒアリングしたところ、「まさにそんな商品を求めていた!」というお声をいただいたので、開発に向けて動き出しました。
この商品でもっとも重要なのが、生産者様の土詰めや播種は従来通りにできることが前提で、手軽に切り取れること。ただし、意図せず切れてしまうことを防ぐため、一定の強度も必要です。この2つのポイントをバランスよく満たすことが、商品の完成度を高める肝でした。
試作品が仕上がると、お客様のところへお持ちし、使用感やご意見を何度もヒアリングしました。接合部分の幅や形状を調整していくことで、“丁度いい”接合が実現。さらに、販売店で陳列する際のことを考え、ラベルを挿すことができる穴をつける工夫もしました。試作を重ねた結果、カットプラグ(切り取ることができるプラグトレー)が完成しました。
カットプラグを開発しお客様に喜んでいただきましたが、実際にカットプラグに土をつめてみると、播種や運搬時に慎重にならざるを得ないため、カットされていない通常のプラグトレーを下に重ねてご使用いただく提案をしていました。しかし、補助用のプラグトレーを購入しなければならず、お客様にとってはコストがかかってしまうことが課題でした。
そこで耐久性とコスト面の問題を解決するために開発したのが、プラグトレー用アンダートレーです。通常のプラグトレーとセットでもカットプラグとセットでも使える商品で、プラグトレーに土が入った状態でもたわむことなく、形状を保ったまま持ち運ぶことを可能にしました。
このアンダートレーを用いることで苗育成時の問題解消と、出荷時の利便性が格段に上がりました。また、育苗工程で使用される発芽室のレールにもぴったり合うため、プラグトレーのたわみによる落下が起こりにくいという利点もあります。さらに、あらゆる規格のプラグトレーと組み合わせてもズレにくい設計をしているため、非常に汎用性の高い商品となっています。
そして当初の課題であったコストの問題も解決。カットプラグを支えるために別のプラグトレーを購入していただくよりも安価で使いやすい商品ができたことで、お客様にも安心しておすすめできるようになりました。
- 耐久性があって、周りよりも目に入るPOPが欲しい
- TOポップスティック
園芸売り場のPOPといえば、トレーの全面に貼り付けるタイプや店舗用スチール什器に吊り下げるタイプなど様々ですが、どれもいま一つ見栄えが良くないとの意見がありました。
苗のメーカーにとっては、「自社の自慢の苗を一つでも多く購入してもらいたい」という思いがあり、お客様の注目を集めるために従来のPOPとは違う、いかに目立つPOPをつくるかが課題となっていました。
最初は簡単かと思って取組み始めたものの、なかなか思うようにはいきませんでした。「目立つPOP」ということで、広告面を大きく見せる必要があり、今まで作ってきたポットやトレーなどとは求められる機能が違うことがその大きな要因でした。
耐久性、機能性、コストの条件をクリアするため、素材の選定から成型手法など試行錯誤を繰り返した末に、ようやく完成させました。完成にともない、自社のトレーに使用できるように、トレーに挿して使用するタイプに対応するため、自社のほとんどのトレー製品も合わせて改良しました。
POPの面を大きく、視認性を考慮した絶妙な角度を実現したことにより、お客様に商品の存在を認識してもらいやすくなり、また、『売り場に統一感が出てきれいな売り場になった』や『売れ行きも以前より好調になった』などの嬉しい報告も頂戴しています。
また、トレーがなくても自立できる専用スタンドも新たに作って発売も開始しました。